三州屋@銀座

細い路地の突き当たりにある引き戸を、ガラッとあけて中へ入る。相変わらず、威勢のいいおばちゃんが三人店の中をあちらへこちらへと慌ただしく立ち回っている。


「お客さん、何人?」
「三人」
「二階に行ってもらえる?」


今は13時15分ごろ。普通の店ならそろそろ客が引けているはずだ。でもまだここは、ぼくのように入ってくる客が途切れない。


「ビール!」
「ハイ!」
「それと海老フライ定食、ご飯は1/3ぐらいで」


「冷酒。あとでもうひとり来るから二人ね。」
「こちらでいいかしら?」
「ウン」
 :
「おぅい、このつまみはオレのかい?」


今度は白髪頭のスーツの二人連れが入ってきた。


「アラ〜、お久しぶり!」
「いやぁ、お袋が亡くなってねぇ」
「そりゃ大変だったわねぇ。。。おいくつ?」
「百歳。」
「ころり?」
「肺炎で。」


まるで赤ちょうちんを思わせるようなエネルギーが充満してる。女性二人連れとか、年配の夫婦ももちろんいるのだ。でも、耳にはいってくる客とおばちゃんの会話を聞いてると、一瞬ここは貴重な”おじさんのサンクチュアリ”!?なんて思えてくる。そんなことを考えながら刺し身定食を食べ終えたぼくは、ちょっと元気をもらったような気分で、仕事に戻ったのでありました。