踊らずとも伝わる何か@ルグリと輝ける仲間たち


このとてつもなくぐったりしちゃう夏、<ルグリと輝ける仲間たち>をみる機会を2回がありました。プログラムAという、主にパリ・オペラ座のバレエダンサーたちが通常の演目(?)の中からある”部分”を抜き出して踊るもの。全幕特別プロは、主な役柄をオペラ座の面々が、そして東京バレエ団と共に「白鳥の湖」。いやぁ、なかなかいい時間をもらいましたっ!誘ってくれた人に感謝。今まであまりバレエをみたことがない、ホントにド素人の印象というか、ひょっとしたら勘違いかもしれないんですが、自分用のメモの意味で。


  • ゆっくりが綺麗な人は、スゴイみたい

極端にいってしえば、踊っていない時が様になってる人は、踊ってもスゴイのかも。なんていうんでしょう、姿形ということよりも、そのキャラクターがまさにそこにいるようにみえてくる人がいるんですね〜。例えば、白鳥の湖第三幕で王子ジークフリートをやったマチュー・ガニオが王妃の横の椅子に身体を斜めにして座っている時。まだまだ妃を選ぶなんてことを考えたくないけれど、母親には逆らえずしかたなく舞踏会を観ている若い王子。Aプロでもただ立っている姿が印象的でした。彼のことは予備知識なく初めてみたんですが、両親ともバレエダンサーなんだそうで、優れたお手本を間近でみる機会が多いと(思うんですけど、どうなんでしょう?)、気付いたり考えたりするチャンスも増えるということもあるのかな〜なんて。

いわゆる遠近法って、ぼくはちょっと不自然に感じちゃうんです。みえているいろんなものを、一枚の紙の上に表現しようとするルールとしては便利なんですけど、そんなふうに風に見えているわけじゃないと思うんです。比較するものじゃないのかもしれませんけど、印象派の絵は、実際にはこう見える(ように思うよね)というものをより意識してると。だからありのままじゃない部分もあるのに違和感を(あまり)感じない。今回何人かの踊りで感じたことなんですが、一つ一つのポーズとして見ると不自然かもしれないのに、それが連続した動きになると実際よりもそれらしくみえてしまう。例えば手の振りをぴたっと停める時に肘や手首、指に少しずつ角度をつけると、綺麗にブレーキがかかってフワリと止まる(と思うんですがどうでしょうねぇ)。ディズニーが次の動作の前に、ほんの少しだけ逆方向に動かす、なんていうものに近い気もします。マチルド・フルステーは、立ち姿からも切れのよさみたいなものが伝わってくる力を持っていると思うんです。彼女にベテラン陣のそんな動きがこれから備わっていったら、どんどん凄くなるんでしょうねぇ…。みてみたいなぁ。

  • 踊るのか、表現するのか

もちろん両方するんですよね。わはは。でも、表現するって難しいなぁって改めて。自分なりでありながら独りよがりでもダメだし、誰かにいわれたままでもダメなんだろうなと。例えばTVでみた「新しい曲に臨む度に、その国の言葉を使って情景や作者の心情までを推測し、具体的な言葉にして楽団員に伝える指揮者」と「自分がデザインに出ないように心がけている、というデザイナー」。正反対に見えるこの両者だけど、本質的なものを自分なりのやり方で突き詰めていくという点は、重なると思います。だから結果として、どちらの場合も他の誰のものとも違ってくるんだと。何がいいたいかというと、群舞で綺麗に揃って踊っている日本人ダンサーの多くはどうしてソロとかペアになると目立ってこないんだろう…って(ごめんなさい…)。で、何が違うんだろうかと。楽しいなら、なぜ楽しいのかとかどう楽しいのかとかそういうことを感じたいな〜っと思うんです。もちろん、みる自分の能力というものも鍛えねばいけません(苦笑)。

  • 不思議なこと

客席の真ん中辺りから、踊りが一区切りする度に「ぶら〜〜ぼぉ」と叫ぶおのこありけり。盛大な拍手の時も、そうでもない時もその声量変わることなし。思わずプラセボ効果なんて言葉が頭に浮かぶのでありました(爆)。あぁいうものなのかしらん?
それから気になってしまったことがもう一つありました。白鳥の一、三幕で使われていた、パステル系の色を多用した衣装や靴(-_-;)。好き嫌いという面ももちろんあるんですが、あそこまでトーンが揃っちゃうと舞踏会がずいぶん平面的にみえちゃう気がするんですけどねぇ。でも個人的にはそれを救っているなぁとみえたのが、道化役のマチアスですね〜。みんなが揃って踊っている場面で、ひとり違う動きを動きをキビキビとしている役がいるっていうことが、こんなにも全体のリアリティを高めているように感じるってちょっと不思議な体験。


ほかにも、いろんな人の踊りが印象に残ってます。「オネーギン」のモニクとルグリ、オデットのミリアムとかとか。人の区別がちゃんとできるようになると、もっといろんな楽しみ方も出来るんだろうなぁ。もう少しバレエを見たい気分。ホントにいい二晩でした!