リアルってなんだ?@佐藤卓展(銀座G8、東京)


活躍を続ける佐藤卓さんが、亀倉雄策賞を受賞された記念の個展が明日4月25日まで開かれてます。もっと早く行こうとしてたんですが、またぞろギリギリに(^_^;)ゞ ミッドタウンの21−21で行われた「Water」での受賞なのですが、会場にはその時のポスターなどだけでなく、2004年に行われた「紙の化石(PaperFossil)」をさらに発展させた作品がたくさん並んでいてなかなか面白い。


この紙の化石、もともとは地図の等高線のように薄い白紙を何枚も張り合わせて、ケータイ電話などのモックアップを作るための技術を使ったもの。それを全く違う用途に使っています。以前は野菜が紙の中から化石のように掘り出されているかのような作品だったのだけど、今回はさらに進んで"現実にはありえないもの"がずらっと並びます。パプリカと本が達磨落としのように合体したもの、本の中から(恐らく氏のコレクションから選ばれたちょっと不思議な)キューピーが出現してくるもの、開いた本のページに干物が貼り付いているもの、などなど。


リアルというのは一体何のことを言うんだろう。。。これらを眺めてそんな疑問がわいてきた。それは同じように現実には存在しないものでも、CGを画面を通して見ているのとはずいぶんと違う印象を持ったから。この積層された紙もCGもどちらも非現実的なものなのに、なぜここに並んでいる紙のほうは"リアル"に感じているんだろうか?と。そこに実物があるから、ということもあるけれど、仮にその紙が白くなく、真っ黒だったら…あるいは木目だったらどう感じるんだろう。頭の中で考えることしかできないけれど、今とは違う印象をまた持つんじゃないか。例えば、黒い色をしていればそれをプラスチックだと思うかもしれないし、木目だったら木でできているだろうな〜ということにまず意識が向くんじゃないか。でも今目の前にあるそれは、白くてそして紙が積み重なったもの。よく知っている物質なんだけど、そんなふうにできている立体に出くわす経験は普通あるものじゃないから、材質ではなくカタチそのものに意識が向いたんじゃないのかな、なんて。


結局どんなことを考えたかというと、"リアルってその人が経験を通して得た概念(いってみれば「思い込み」)"かもしれない、と。例えば、経験の無いものはTVで見ても結構リアルに感じたり楽しめたりするけれど、自分がいったことがある場所がTVから流れると「なんだか違うな〜」と思う…なんてのはそういうことなのではないか。だとすれば、今自分がこの会場でしていることは経験をして、新しい思い込みを作っている最中なのかもしれない。う〜む、この紙の塊を見たことの無い人に、この展示で感じることを伝え、共感してもらうことは、可能なんだろうか?


。。。こんな妄想をしていると、リアルと対のように出てくる"バーチャル"っていうヤツも揺らいでくる。バーチャルにも、経験から類推ができるものとできないものの二種類あるんじゃなかろうか。現実には、経験をしていなくても自分の経験の中から頑張って似たようなものを引っ張り出して重ねたりするんだろうけど、そういうことを続けてるとある時に滑ってしまう気がする。ファックスでやりとりしていた海外通販と、ネットで注文する海外通販は同じものが手元に届く場合でも何かが違う気がするのはそんなことが関係しているのかもしれない。バーチャルを意識せずに暮らしていた時代よりも、今は経験をもっともっとしないと"腑に落ちる"ような理解はできないのかもしれない。さて、あなたはこの展示から何を感じるんでしょうね?。。。明日までなんですけど(-_-;)ゞ