システムの囚人vs.仕事道楽〜改良や小さな成功を積み重ねていくと、長期的には凋落する(かも)


東大・中原研とNPO Educe Technologiesが行っているLearning Barは、「組織学習・組織人材の最先端の話題をあつかう研究者と実務家のための研究会」。後悔されていて、毎回多くの希望者があって抽選なんですが、ラッキーにも先週の金曜日の会に参加できました。今回の話題は、"社長の思いで組織は変わるか?〜対話による組織変革"。トップダウンでもなく、ボトムアップでもない、対話という方法(←個人的にいま関心があるんです)について。それまでやってきたコンサルティングの限界を感じて、社内ベンチャーでエグゼクティブ・コーチングを始めた野村総研の永井さんが、いろんな事例紹介を通じてその取り組みを紹介してくれました。


立ち上げから今に至るまでのこと、社長など経営陣の実態など、いろいろなことが紹介されました。自分が印象的だったことは、すぐに近くの参加者と意見交換。その場で互いに言葉にしあうというのは大事なことですね〜。さて、印象に残った一つが現状分析をしている中でみえてくる"システムの囚人"という話。自分なりの咀嚼でいうと「イノベーティブな商品やサービスの提供という"成功"を継続させるはずだった仕組みが、市場の成熟に伴い短期的な成果を積み重ねることになる。それは自らを硬直化させることになり、長期的には凋落していってしまう」状況のこと。ウ〜ン、新しい取り組みができなくなったり、スタッフが増えていったり、縦割り組織が進んだりする理由(の背景)にはこんなことが…と目からウロコ。ところが、偶然その翌日に読んだ「仕事道楽〜スタジオジブリの現場」には、そのジレンマをものともしない組織が描かれていたんです。ジブリでは例えばこんなやり方や考え方をしているんだそうです。う〜ん、、、スゴイっ!なぁ。

一本成功したら次をやる。失敗したらそれで終わり…(中略)…いい作品を作る、これがジブリの目的です。会社の維持・発展は二の次です。ここが普通の会社とは異なります。

(つくる映画は)解決困難な壮大なテーマを設定して、そこに挑む。

そして、そのためのやり方例としては、

この歳になりながら、まるで新人監督のような作り方をしている。これには驚かされた。まず、自分の得意技を全て封じた。もっともわかりやすい例で言うと、誰も空を飛ばない。(もののけ姫で)

宮さんの映画づくりでおもしろいのは、絵コンテを途中まで描くともう作画に入ることです。つまり結末が決まっていない。

そして、人とその関係。

「尊敬していたら、一緒に仕事できない」というのはぼくもまったく同感でした。遠慮会釈なく存分に言いあうことで仕事が成立しているんですから、「尊敬」という言葉は入り込む余地がない。

ぼくにとって、何が楽しいといって人と付き合うことほど楽しいことはない。好きな人ととことん付き合う、好きな人に囲まれて仕事をする、これは最高じゃないですか。

ミーティングのやり方〜(その一つは)「自分の意見を用意せずに望む」。いずれにせよ、最後は意見をまとめなければなりませんが、ぼくとしてはこれかなと思ったところで、みんなを説得します。可能な限り納得するまで話し合って、その時間を共有する。朝までかかることもありますよ。でもこれが楽しいんです。

組織体としての姿勢や大きなやり方はあまり変わらないけれど、人のやり方の中に意識的に変えていく部分がある…そういうことなのでしょうか。運用の仕方が変わるということに近いのかな。"対話"的な部分にしても、とにかく互いを分かりあう…ということなのですね。そのエネルギーになるのが、何を目指すか何を大事だと思うかという部分なのでしょう。久し振りに、ポニョで映画を観に行ってみようかなぁ…なんてぼんやり思っていたのですが、ホントに行ってみたい気持ちが強まってます(←影響を受けやすいのです)。余談ですが、この本、なんだか10代の頃に夢中になってSFを読んでいたことを思い出しながらページをめくっていたのでありました。


仕事道楽―スタジオジブリの現場 (岩波新書)