iHonという可能性はどうだろう〜iPhoneで二ヶ月経って


銀座というのは面白い街です。いろんな顔が同居してます。22日は小雨降る中、隣のブロックまでH&M(←欧州にたくさんあります)に入るための行列がまだできていて、係員が信号が変わる度に声を張り上げて誘導中。かと思えば向かい側の歩道はそんなことにお構いなしに大きな声で中国語を話す家族とおぼしきグループが何組も歩いてる。一瞬自分が何処にいるんだっけ?な感覚に(笑)。


iPhoneを使い始めて二ヶ月、携帯電話では得られなかった、別の可能性があるとますます感じてます。しかし、それはどういう可能性なのか。なかなか言葉にできないのが、どうにももどかしい。自分の行動で、変化したことやできなかったことができるようになったことを挙げることはもちろんできます。でもまぁ携帯電話だって、やろうとすればできたこと、使えた機能がたくさんあるはずだよなとも思うわけです。それでもしなかったという事実は、機能があったかどうか以上に大事な問題を含んでいるとぼくは思うのですが、ともすればそれは本人の意識の問題にされがちです(まぁ確かにそれが原因ということも、ないとはいいませんが…)。機能や行動レベルのことに留まらず、次の変化につながりそうな、価値観や考えが揺さぶられていることをうまくメモできないだろうか?なんて思っています。


中央通りから一本はいったところにある、gggギャラリーでは今月28日まで、デザイナーの平野敬子さんの個展が開かれています。資生堂qiora、東京国立近代美術館MOMAT、富士通の携帯電話・所作などの数々が、展示されています。同時にWhiteBookという特製の「本」が希望者に貸し出されていました(この本がまた、素晴らしい!思わず衝動買い…)。この中には平野さんがしてこられた仕事とその意図が書かれ、冒頭にはこうありました。

…展示会においての説明などの文章は、会場の壁面などに貼られ、表示されるものであるが、より文章に集中できる方法を模索した結果、文章を収めた一冊の本を作ることにした。本は手の中に収まり、それを読む人は好きな場所に移動でき、良好なコンディションで言葉を受け取れるという方法である。


先月、銀座松屋で「デザイン物産展」という企画展が開かれていました。各都道府県ごとに伝統的や創造的などの共通の切り口で物品が並べられていました。この展示会、iPodTouchが借りられるようになってました。iPodTouch/iPhoneで展示物についての説明をみることができたんです。会場の中には無線LANが巡らされ、それぞれの物品についての説明や、ものによっては製造工程などが掌でみることができる。例えば、岩手県の情報地塗りは下のように。まぁ、ステップとしてみたいところまで階層を下りたり戻ったりするのにまどろっこしい点もありますけど。その説明は、展示物の目の前でそれをみてもいいし、隅のカフェで一服しながらそれを振り返ることもできました。


本にもiPod/iPhoneにも共通しているのは、使うために必要なのは自分の身体だけ。しかも、捲ったりのなぞったりした結果が手の中・目の前にある。言葉にすると何とも陳腐なのですが、これは気持ちいいのと同時に、意外に重要だと思うんですよ。それまでしていた"掲示物で説明を各々で読む"という行為が、自分の身体を使うというよりシンプルでわかりやすい行為に"自然に置き換えられた"瞬間だって思えるから。当たり前だったことが、より自然な作法で置き換えられて変わるということは、一個人に留まらず大きな流れになる可能性を秘めているんじゃないでしょうか。しかも、今までしていなかったことを新らしく始めるよりも、変わる確度は高いんじゃないかって。


モノとしての差異や特徴ではなく、これからの生活変化を予測しようとするならば、携帯とiPhoneを並べてどちらがよりどうだということに、余り意味はないんじゃないか?って思うんです。モノがきっかけで行動に変化が起こり、それが続くと意識や価値観が変わっていつしか"当たり前"が変わってしまう。ウェアラブルなセンサーであり、無線LAN端末であり、その上で動くアプリケーションが比較的簡単に作り配布できる(らしい←このことは自分では未知の領域なので、いろんなアプリを割合簡単に試せること以外は実感はないですけど)iPhoneはどんどん用途が拡がって…そんな試行錯誤のアミダくじの先に一つの未来がつながっていた。。。なんてことがあるような気が今はどんどん強くなってます。さて三ヶ月、半年後にはどうなってるだろう(笑)。

  • 平野敬子個展「デザインの起点と終点と起点」2008年9月29日(月)まで

 ggg(銀座グラフィックギャラリー)中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル1F


 ※次回の展示は10月7日から、原研哉さんの個展だそうです。こっちも楽しみだ〜!