笑いで問診、ツボを一押し@立川志の輔独演会(エポック中原、武蔵中原・川崎市)


随分前のことですけどある独演会でのこと、「何の噺をやるかをあらかじめ決めておくってことは、ないんであります」と立川志の輔さん。驚いた。何度か通ううちに、観客との距離や一体感を、笑いで測りながら何をやるかを決めていくのだろうな…と思うようになりました。噺家とお客の間にあるのは、落語。でも両者の間の一体感的な空気が生まれるかどうかは、お客の反応の仕方にかかっているらしいことを何度か体験しました。同じ場所、同じ噺をやる時でも、客層が違えば反応は違ってくるんです。年齢、男女、落語好きが多いかetc. 昨日はエポック中原なる場所で志の輔さん。ここはきっと、マニアではなく、落語大好きではない、年齢層高目のお客さんが多いんだろうなぁ…なんて予想しながら会場へ。


先日志らくさん内幸町の独演会でこんなことをいっていました。「通りかかった客がふらりと入ることもできるような落語会」というのもいいのではないかと。その時の独演会は、いわゆる"マニア層"が多くて「今日はどこの部分が変わっていた」なんてことに関心を持って聞いてる…のだといってました。へ〜っと思っていたが、休憩時間に最前列を通ったら何人もの人がノートを広げているのが見えました。なるほど。同じ志らくさんの独演会でも横浜のにぎわい座になると、客層がややばらけてまた感じが違うんだとか。確かにそんな気がしますねぇ。にぎわい座はビール飲みながら落語が聞ける場所ですしね。どっちのほうがいいんだろうなぁ?…なんてことが頭の隅に残ってました。


。。。いやぁ、やっぱり平均年齢高そうで"ふらり"的なお客さんが多いようです。まだ誰も舞台に登場していない状態でしたけど、幕が上がりはじめたら拍手。あぁ、いいですねぇ。座布団の前にはにょっきりと、古めかしいマイクがはえてます。前座にしては時間の使い方が落ち着いてるな〜と、めんそーれさんの「子ほめ」にちょっと拍手。そして志の輔さん登場。曰くここ、初めてやる会場なんだそうです。なんだかいつも以上に枕が続きます。こうやって今日の雰囲気を測るんですね。。。あら、滑っちゃった、珍しい。でもリカバリーは流石ですねぇ。仕事でグループインタビュー(グルイン)の司会をやっていたことがあるんですが、集まってもらった6〜7人がたくさん喋ってくれたからといっていいグルインだったかというと、そうとは限らないんです。無言の時間が長くたってそれも十分雄弁な発言として、必要な情報が十分引き出せると推測できれば、成功なんです。何でそんなことを思い出したかっていうと、客席から大きな笑いが起きてもそれだけじゃ足りないのかもしれない気がしたんです。笑い声がたくさん起きても、一体感といったらいいのかな、志の輔さんが観客の指揮者になったみたいに空気を自在に操る状態に成っていきそうかどうかの方が大事な点なのかもしれないと感じたんです。


一席目は「親の顔」でした。盛り上がりつつも、今日の客席は、TVをみて笑っているような反応を思い起こすような印象で始まりました。まるで舞台と客席の間に線があるみたいな。それで枕でいろいろ聴診器をあてて、どの辺りがツボかを一席目までかけて問診していたんじゃないかって。自分も後ろの人のレジ袋が始終カサカサと音を立ててるのが妙に気になってしまったのであります(苦笑)。そういう意味では「客の顔」ですね(笑)。15分の中入が終わり、再び登場した志の輔さんは袴姿でした。座ると枕もなく「徂徠豆腐」。一気にみんなを持っていってくれました。

「はい、はい。」
「はい、は〜い、は〜〜い。」
「あら、あら〜は〜い。」
     :
「オメえ、聞いてねぇだろっ!」

でました!いつもの"ひとり頷き"も乗ってきて、会場は笑ったりシ〜ンと静まりかえったり。気がついたらこっちも引きずり込まれて大団円。お見事でした。



。。。あんまりこういうことはいいたくないんですが、それにしても川崎市のホールってばみんなこうなんですかね。9月の談春さん@溝ノ口では20:30に退けていること厳守令がでてました。今日はゴミ箱を撤去しちまうわ(おかげでカサカサ…)、終了後に演目が張り出されていても「止まらないで進んでくださ〜い!」と連呼。理由は分からないじゃあないですが、「歓喜の歌」の公民館を思い出しちゃいますヨ(爆)。