最近のお気に入りパン三店〜Tigre,Spica,SignifiantSignifie


最近やっとこさ分かったんです。同じ食パンでも、牛乳やバターを入れて作られるタイプと、そういうものが入っていないタイプでは、トーストの時間が随分違うんだって(もちろん、好みは人それぞれですが)。後者のパンは焼き目が付くまでに随分時間がかかりますが、ほんのり色が付くと小麦粉の香りもたってきます。そんなことも新たな楽しみにしつつ、最近メモに加わったパン屋さんです。

Tigre(ティグレ)

 駒沢通りからちょっと入ったところに、1年ほど前にできたというお店。ぼくよりも食い意地のはった先輩からの情報で、早速いってみました。日曜のお昼前にいったんですが、横一杯に拡がってるショーケースに、一体何種類のパンがあるのかわからないぐらい並んでいました。昼過ぎから焼き上がるバゲットや角食は後ろの壁が定位置のようでまだ並んでいませんでしたから、全部勢ぞろいしたらさぞ壮観だろうなぁ。この中には土日だけ焼くパンがあるそうなので、この日はさらにたくさん並んでいるとのことでしたが。帰ってからお店のサイトをみたのですが、シェフ(シニフィアンシニフィエの志賀さんとも仕事をされていたそうですね)の他三名で、これだけのパンを作り、販売されているとのこと。


お店だけじゃなくて、パンも明るく元気のいい、はつらつとした印象です。ハード系のパンもむちっとしながら軽やかに跳ねるようですし、クロワッサンの皮さっくりも中しっとりも後口はさっぱりしてます。あれこれ重ねるよりも素直に、でも単にそのままではない、若いエネルギーを感じます(こっちが歳いってるせいか…も)。ハード系パンをつかったサンドイッチ(味付けが濃すぎず弱すぎず、自分の好みにぴったりでウレシイ)と、ちょっと(かなり)ぜいたくなクリームパンは、今日みたいな小春日和に表で食べるのにぴったり(といいながら、その帰りにはLaetitiaで蜂蜜ロールと紅玉のパイを買っちゃったんですけどね)。それにしても、散歩にもなるし、次はどのパンを買おうか、今からちょっと楽しみです。(ティーグル、かと思ったんですが「ティグレ」でした)

 営業時間:9:00〜20:00 定休日:火曜日・第3水曜日

スピカ麦の穂

旗の台と長原の中間辺り、といっても駅からは少々離れた小さな商店街の中にある小さなお店。ここのパンは、蕎麦でいうなら更科じゃなくて挽きぐるみか田舎蕎麦。ご飯でいうならば、しっかり味のある雑穀が混じったもの。日本酒ならば、好きでよく飲んでいた"しっかり+すっきり"な能登純米酒。そんなものたちが浮かんできます。バターやミルクを使うリッチな味わいではなく、国産の小麦と天然酵母でつくられた毎日食べ飽きないパンです。噛みしめて、口の中で溶けてゆくのが楽しめます。クロワッサンやベーグルも、その特徴を受け継いで、しっかりとした味わいです。

天気や季節でいろいろと調整して変えます。毎日記録をつけるとそれがどう影響するか分かって面白いんですよ。飽きないですねぇ。

と話していたのは、お一人で(?)切り盛りされているご主人。思わず笑ってしまったのは、ここの食パンにジャムを塗って食べたら、ジャムがパンに負けてしまったこと。逆に、ワインとチーズ…なんていう時でも十分ついてきてくれます。ここのパンの"力"は、それだけを食べるよりも、何かと合わせようとした時によりハッキリと分かるようです。冷蔵庫のように温度の低めのところで寝かせるとさらに味わいが増すという、カレーや煮物のようなところのあるパンです。

  • スピカ麦の穂 品川区旗の台5−28−13(電話:3788−5536)

 営業時間 11:00〜19:00(月曜火曜休み)

SignifiantSignifie(シニフィアン・シニフィエ)

いわずとしれた話題のお店。世田谷公園のすぐ近く。ご近所には、ラ・テール(渋谷の東急東横店にも出店)もありますね。他のお店もあるようですし、ラ・テールは他にも展開されてるようですからパン店の集中度はかなり高いのではないかと思いますが、何でこの地域に集まるんでしょう?
さて、お店自体はカフェかと思うようなゆったりスッキリとした雰囲気です。パンの値段はそれなりにするように思いますが、どこのお店でも原材料の値上げは避けて通れない現実ですし、棚のパンをじっくりみるとフランスからやってきた某パン屋さんより値段も味(←自分の好みです、もちろん)もずっとお買い得!なんていうものもありますし、一概に高いと決めつけちゃいけないかと思います。ちと反省。
こちらのパンは何が驚くといって、それぞれがみな違うお店のものかと思うぐらいハッキリと特徴を持っていること。あんパンはふんわり。黒豆がたっぷり入った季節限定のパンは、外郎のようなフルーツケーキのようなずっしりむっちりとした楽しい口当たり。食パンはしっかりしながら強く深い味わい。詳しいことは分かるはずも無いのですが、ひとつのお店でこれだけの違いを作り分けているのは、小麦粉選びから組み合わせに始まって焼き上げるまで、別々に扱っているということなのかなと想像しちゃいます。もしそうなら、かなりの手間ヒマ人手を要しそうですよねぇ。こういうことを実現されるというのは、努力も苦労も並大抵のことではないのでしょうね。
それにしても、その店名といい、サイトにフィロソフィを掲げたりするところといい、数あるパン屋さんのなかでもかなり異色。ご近所に愛されるパン屋さん!には留まらない大きな目標をヒシヒシと感じます。シェフならではに"パン"を解釈し、進化させた日本流のパンという印象です。

 営業時間11:00〜(不定休のようです)