味の伸びしろ@立川談春独演会(にぎわい座、野毛・横浜)


談春さんはフルボディの美味い赤ワインみたいだな…落語の後に一週間程寝かせたというジビエを食べる会にいったからなんだと思うのですが、自分にとっての立川談春さんの年内最後の独演会で、そんなイメージを持ってしまったのです。

今年はね、私が一番。そう思ってたんですよ。落語では。ホントに。

もし、この日初めてこの人の落語を聞きに来た人がいたら、印象が一瞬悪くなっちゃったかもしれないような発言を、綺麗なパステル系の着物をきて現れた談春さんがいきなり切り出しました。


「赤めだか」が縁で、中村勘三郎さんが落語会にみえたりあちらに呼ばれたりという話から、NHK杯での練習から本番、その後のインタビューまでオーラを纏いつつも頭一つず抜けたキャラの浅田真央ちゃんへの思いまで、談春流今年のベスト3を揚げつつ枕が進みます。

ウ〜ン、どうしたんだ、ずっとこのままなの?って思ってますよね。何でこういう話になっちゃったかな。。。うーん、あ、そうそう。実はミュージカルに出たことがあるんですよ。これを枕にするつもりだったんだ。。。

昔、西城秀樹主演のミュージカル「坂本竜馬」に出演し、その打ち上げに家元が来た…という話から「一分茶番」へ。このまま枕で通すのかな!?なんてちょっとドキドキワクワクの展開だったんですが、結局飯炊きの権助のずーずー弁に大笑い。す〜っと談春世界が広がったのでした。


談春さんは、黒い羽織が似合うなぁ。10分に短縮された休憩が終わり、再び現れた談春さんにそんなことを思っていたら、一気に「夢金」へ。ふ〜っと辺り一面に雪が降り続く人気の無い光景が広がりました。何なんだろうなぁ、この力(というしかないのかな)。この持っていき方や関係の作り方が噺手の個性なんでしょうね、きっと。そして、寝言で金が欲しいと叫んでる熊蔵というとんでもないキャラと彼を絡めての、これまたとんでもないストーリー。非現実的なのに現実味たっぷりっていうところがなんとも面白い。。。何で落語って心底笑えるんだろう…って思うんですよ。理由のひとつは、話し手との間に"疑似信頼関係"とでもいうべきものが一瞬のうちにできちゃうからではなかろうかというのが自分なりに今は納得していること。自分が赤の他人が大勢いるところで、引き込まれたりしんとしたり声たてて笑うなんて、落語以外じゃありえない(と思えちゃう)。TVだってとうの昔にそんなものじゃないし。


「去年と比べての"変化"という点でみたら、私が一番成長したでしょ!ね?」…そんなことから始まった独演会は、はからずもそれを2時間の中で体現するような形で、幕を下ろしました。寝かせた赤ワインが何年も経て素晴らしく変身する…それを日々の中で言い切り、している談春さん。どんな味になっていくんだろう。冒頭でちょっと触れたジビエも、なりはとっても小さいのに、血を感じさせるしっかりした複雑な味わいの、今までに食べたことのない"肉"でした。これも熟成というものが作り上げたもの。あぁ楽しみがまた増えました♪ 来年も、チケットが取れない会が幾つもあるでしょう(既に1月9日はダメだったし…涙)。でもあきらめませんとも。中村座での公演(?)も!