場所の力@LIGHT-LIGHT(ルイ・ヴィトン表参道7階ホール)

ほぼ真っ暗な部屋に、小さな白い光点が踊っています。よく観ると、100ぐらいはあるのだろうか、棒が林のように並んでます。そこからふわ〜りとピンポン玉を一回り小さくしたような、すべすべの発泡スチロール(?)が浮き上がります。アシカのしっぽを口にくわえて、息をふ〜っと吹くと小さな玉がフワフワするおもちゃがありましたっけね。あれのまっすぐなやつがそこら中にいてそれぞれ玉を吹き上げている、と思ってもらえれば(笑)。一つだけアシカと違うのは、空気を吹き出す棒には明かりも入っていて、球が浮き上がるとその下面が白く光ること。一斉に光球が浮き上がったりウェーブをしながら寄せてきます。


落語には三題噺というのがあるそうです。落語中興の祖と呼ばれる明治の大名人・三遊亭圓朝が作った落語には幾つもそういうものがあって、今でも伝えられよく演じられているそうな。例えば、芝浜とか鰍沢なんていうのがそうだと(立川志らくさんの受け売り)。この展示会、三題噺風にいえば「風」、「小さな玉」、「白い光」。これでどんな世界に連れていってもらえるかといえば、自分の場合は"場所"を感じない世界でした。確かに目にはいろんなモノが映っているのに、どこかは分からないし、そういうことはどうでもいい(笑)。この、場所を特定したり認識する感覚というのは、普段意識することはあまり無いけれど、なかなか強力なものなのだなぁとこういう時に思います。だから逆にこの感覚が希薄になると、意識は何かのタガが緩んできて、あれこれ連想したり自由になったりするのではないでしょうか。夢に近いような、といえば少しはわかりやすいかな。


明かりの落とされた空間に立って、吹き上がる小さな球たちを眺めていて、思い出した光景があります。一年ほど前に夕闇の中の、石垣島の林道で明滅していた小さく鮮烈な光、八重山ボタルの群舞です。あの時も、無数の星に囲まれて、自分がどこで何をしているのかわからなくなりました。
床に座ってみると、天井に光の波紋が映っています。一つの時もあれば、池にいくつもの光が投げ込まれて天井中にその波紋が拡がったり。まるで、ゆらゆらと水底から外の世界を眺めているような感覚に包まれます。場所という意識が無くなった空間で、時間も揺らぎます。


会場の一角で、テーブルから浮き上がる球があります。アンリ・シャルパンティエ特製のメレンゲの球。ピンポン玉のように滑らかな表面のものは、ピタゴラスイッチでおなじみのように、ほぼ回転せずに吹き出す空気をいなしてゆらゆら留まることができるのですよね。でも、メレンゲは流石に小さなクレーターでいっぱい。それは勢いよく回転していました。ちょっとした違いで、振る舞いがこんなふうに違うなんて面白いなぁ。。。なんて思っていたら、次の瞬間そのメレンゲは、口の中で回っていました。苺の味がして美味です。でも、これでしっかり現実に戻ってきました(笑)。
そろそろ、メレンゲから最中に趣向替えするそうです。そっちも、いいなぁ(笑)。

  • LIGHT-LIGHT 4月5日までの13:00〜20:00です。