夏先取り、笑いも汗もたっぷり〜立川志らく独演会(2009年5月19日@みなと毎月落語会、麻布区民センター)


久し振りに、いつもの会場ではなく六本木での独演会に、行ってきました。昨年、初めて談笑さんを聴いたのがここでした。この会場、実はクセがあるんです。でも、多少のことで足を遠ざけるなんて、もったいないのが、いまの志らくさんだと感じてます。座布団の上の志らくさんの顔も、楽しそうにみえますもん。よくないはずが、ありませんね。この日も、とても気持ちのいい二時間が、流れました。


さて、今日の志らくさんは、「黄金餅」、中入りを挟んで「井戸の茶碗」という布陣。なんですが、先日の内幸町の独演会での枕、"ケーキ屋・与太ちゃん(仮称)"あたりから、枕が、演目表には書かれないもう一席だって思うんです。この日の枕の一席は、"民主党協会、会長引退騒動"。どこかで、何度か聞いたことがある、かつての落語協会分裂・脱退騒動に、最近の民主党のどたばたを、かぶせてみると…あーら、ジャンルや時期は違っても、人間やってることって変わらない。なるほど、そうかも。これは自分の、勝手な憶測に過ぎないんですが、志らくさん、何かを掴んだんじゃないでしょうか。


貯めた小金を、誰にも渡したくないので、呑み込んじゃう西念坊主。最初は見舞ったつもりだったのに、最後は小金に取り憑かれてる金兵衛。お金を前にして、欲が、業が伝染してゆくような「黄金餅」。餅と小金は遣いよう、ってことでしょうか。人間の捉え方、描き方は、演者によって、いろいろな見方やり方が出てくる。それによって、こちらの感じ方も、違ってくる。そいうことが、いまの自分には面白いです。
そして「井戸の茶碗」。長屋住まいの千代田卜斎親娘から、いつもはじまる厄介事。この親娘、実直ながらも、だからおかしい落語の人物になっていて、そのやりとりでも笑わせてくれます。なるほど。相手方の侍、高木佐久左衛門は、もう元々おかしいですし。
どちらの噺も、結局は、金というものに振りまわされる人たちの、有り様二態。どんな時に、どれぐらい、どう遣うのが最も効果的か、なんてわからない。相手もいることだし。そういうこと、考えるのも苦手なんですけど、、、笑っちゃってます。


落語の楽しさ、面白さって、なんなんでしょうかねぇ。奇をてらうような動作や、意表をついた台詞まわしは、確かにメリハリある笑いで、面白い。落差がけっこうある、絶叫タイプのジェットコースターみたいなやつ。
一方、普通の言葉で、もしかすると抑え気味にさえみえるのに、もう、続けざまに笑いっぱなしというか、笑ってなくても楽しい。こっちは、花屋敷のジェットコースターか、江ノ電かな。それでいて、こっちはなぜか、疲れが残らない(笑うのも、体力要りますよね)。そんな笑いもあるんだな…と、気持ちよ〜く笑ってしまっている自分に気がついて、この日はそんなことを、考えてしまいました。


そうそう、前座は、らく兵さん。いつも座布団を返したり、紙をめくったりで、ある意味一番見慣れているお弟子さんかもしれません。「洒落小町」という、駄洒落いっぱいの噺。怒鳴るような大きな声でしたが、登場のしかたや、噺の中で客席とやりとりをするところ、ちょっと印象に残ってます。


。。。ところでこの会場、6月いっぱいは冷房が入らないんですって(きっと、衣替えをするんでしょうね)。地下のホールだから窓も無くて、そこに人が一杯になって、照明も使ってる。せめて送風だけ…なんてのも、やっぱり校則違反なんでしょうね。客席の扇子とハンカチ、綺麗な薄青のしゃれた柄の着物で汗を滴たらせてる志らくさんをみていて、そんなことも。