あっちの本棚、こっちの本棚


先日久し振りの顔ぶれで飲んでいたら、「本や雑誌は、一切ネットで買わない。必ず書店に行って買う」という友人がいたのです。ほー。その後すぐに別の話題になってしまったので、彼がどんな本屋によく行ってるとか、どんな本をよく買っているのかとか、聞き損ねちゃったのが、今から思えばちょっと残念。



翌日、六本木の青山ブックセンターで、思わず目に付いて買ってしまったのが、京阪神地域をターゲットにしたエリアムック、とでもいうのだろうか、Meets Rejonal誌の特集「東京の手仕事」。エリアマガジンというと、Hanakoを思い出しちゃいますけど、こちらの雑誌の創刊もほぼ同じ1989年、古参かな。この前に雑誌買ったのは、佐藤雅彦さんの連載と美山荘の記事に魅かれて春に買った「暮しの手帖」だったので、年に数冊ペースです(笑)。


"偶然出会う"経験ができるのが、本屋の特徴のひとつ…とは思うけれど、それは書店でしかできないことじゃない、とも思います。「東京の手仕事」や「暮しの手帖」は、書店に行って巡り合ったものですけど、その他のほとんどの本や雑誌は手に取りもしてませんし、目線を合わせてもない。でも、たくさん並んでるから、眺めるだけでも楽しくなるし、そこから何かに出会った時は"発見した"感覚が嬉しいのも事実。時々、"本の方から自分を呼んでる!"というような出会いもあるし。その感覚って、ブレストに似てるなと思うんですよね。つまらないアイデアやすっ飛んだアイデアを、これでもか〜!というぐらいに出し続けないと、キラリとしたものが含まれてこないし、広い場所一面にアイデアを並べて、拾い上げるような感覚が、なんだか共通してるって。


雑誌よりも読んでいるのは、相変わらず「人」の語りみたいなもの。対談だったり、その人が何年もかけて続けていることだったり、そこからみえてくるアレコレだったり。読むだけじゃなくて、機会があれば見にいったり、聴きにいったり。旅行でも、そういうことが、楽しみになってますね。あ、去年からは落語も。元々、「人」でなにかを括っていたところはあります。本も、一冊読んで興味を持つと、その著者のものをダーッと読むとか。ネットになって、そういうことはホント、やりやすくなりました。はてなのアンテナやRSSとか、Googleのリーダーで、定点的に見ているサイトやブログにも、そういう「人」もの、幾つもあります。ネットでは、本屋の店頭みたいな広がりはみえないし、企業や団体は「誰」がうかがえなさすぎて怪しい?し、「人」を頼りにするやりかたは、今のところしっくりきてます。


ネットの場合、空間的な広がりは分からない代わりに、時間的な広がりが別のサポートしてくれます。ブログやtwitterはそれが特にはっきりみえますよね。例えば、いつも見ている情報考学というサイトは、結構な勢いでアプリや本を取り上げてくれるんですが、これは時間軸の上にある書店みたいにも思えます。それも、青山ブックセンターみたいな、なんとなく自分に好みの"偏り"を持ったところ。ここで知って、Amazonへ行く…というのは、珍しくないパタンです。その他にも、そういうトリガーをかけてくれるサイトは幾つもあって面白いし、発信をしてくれる方々には、本当に感謝!


Amazonといえば、ここは本をはじめとして、ものすごいアイテムを扱ってます。自分の感覚的には、リアルな店舗を模しているように思えます。Desktopメタファーみたいな。関連性や脈絡も、あるようでいて、疑似的。だからお目当ての本が分かっている時にはいくけれど、何となくぶらつくことは、バーゲン品探しの時を除けば(笑)、ほとんど無い。コンビニみたいな、便利さかなぁ。


結局、リアルだろうが、ネットだろうが、自分に「むむむっこれはひょっとしたら!」という感覚を起こさせてくれる"本棚"を大事にしたい。リアルな書店といえども、その品揃えや並べ方には"誰か"の意思とか意図が、絡んでくれてるわけですし、ネットで本の紹介をしてくれるサイトのすべてが、自分に波長が合うわけでもないし。よくも悪くもリアル書店だけの頃は"今"の中で拡がっていた自分の本棚が、いろんな人のおかげで、今は時間方向にも拡がったように思えます。あとは、家の中の本棚のがもっと広がると、さらに嬉しいですけど、ね(爆)。


東京の手仕事―今会いに行きたい、オモロイ作り手70人。 (えるまがMOOK ミーツ・リージョナル別冊 東京篇)