高原の夏、ぎゅっと入ってます!?

  • ボーフォール・ダルパージュ(フランス・サヴォア地方、牛乳製加熱圧搾タイプ)


漬物、泡盛、味噌、醤油…身の回りの食べ物にはその土地や蔵の微生物が醸し出す”味”が一役買っている。「蔵を替えると味が変わるから立て替えが出来ない」なんて老舗もあると聞いたことがある。日本酒だって”協会○○号”なんていう種を使ってもやはりその蔵由来の菌と混じりあうんじゃないだろうか。

同じ発酵由来の食品のチーズは動物の乳からつくられる。フランスのチーズの多くは今でも無殺菌乳を使っている。いってみれば、絞ったままの牛乳。3年前、日本で初めて販売されるという無殺菌乳”思いやり牛乳”とそれで作ったというアイスを食べる機会があった。そんなことがあるはずは無い、と思っていても「殺菌=綺麗・清潔、無殺菌=何となく綺麗じゃない」なんてイメージが頭に浮かんでしまう。ところが、それはとても軽くてさっぱりとした、そしてほのかに甘味を感じる牛乳だったんでした。ぜひこの牛乳で作ったチーズを食べてみたい…と思ったんですけど、日本では無殺菌乳を使ってチーズを作ることは法律で認められていない。ざ、残念!CPA(チーズプロフェッショナル協会)のHPによれば、日本のチーズは低温殺菌乳でつくられているそうだ(低温殺菌時の60℃という温度は、チーズを加熱する時の温度に近い)。

さて。ボーフォールはボージョレーの東、スイスに近いサヴォアの山で無殺菌乳を使って作られる、非常に歴史あるチーズ。現地の協会の情報によれば、大きなものだと直径75cm重さ70kgになるというから…でかい!この辺りからジュラの山地にかけては、こうしたサイズの大きなチーズが何種類もあってタマリマセン(笑)。そして通常牛乳製のチーズは一年中作られてますけど、夏の間だけ高地の牧場に放牧されそこの草を食べて過ごす牛たちがいて、この”ダルパージュ”というのはそんな牛の乳で作ったチーズですよ、ということなんだそうな。時に草やハーブ、花を連想させる味わいを楽しめる”生産地限定・夏のタイムカプセル”なのです(^_^) 10日ほど前の購入直後は、フレッシュな印象で軽くすごくミルキーだったけど、先日は複雑でしっかりした味わいに変わって(パルミジャーノとかコンテによくあるような)旨味の粒(アミノ酸?)が混じったりしてきてました。こういう”旬”の楽しみ方っていうのも、いいもんですねぇ〜。