大地を飲む〜岩茶の世界

アメリカ出張などもあってだと思うのだけど、何か身体の”一体感”のようなものがずれているように感じてました。何かに追われてるわけじゃないのに、せかせかイライラ。食欲も旺盛なのに、胃腸がいまひとつ、とか。う〜ん、なんだろうと考えていたら思い出した。3月は毎年ちょっとした変調を自覚する時期だってこと。東京なんかに住んでるから季節の影響は少ない…なんてことはないのだ。身体のコントロールは頭ではできませんからね〜。

こうなると食べ物に頼るしかないと思うのだ。外的なものではしょうがない。だけどもちろん薬までは必要ない。少々睡眠時間を増やしても効かない(そもそも春眠…なのだし)。そんな時に今までは”芽”のもの系を摂ってきたのだけれど、そこに岩茶を加えたい。岩茶はちょっと変わった烏龍茶でここ岩茶房でいただけます。店主・左能さんが書いたこの本↓によれば、岩茶の木々は土ではなく岩に生えていて、皇帝に(薬代わりに)愛飲されたお茶なのだそうだ。中国茶はゴマンとあるが、なぜ岩茶か? 岩茶のちから (文春文庫PLUS)


「あの〜この季節にいいお茶ってどれでしょう?」

店に入ってそう聞いてみた。

「この白毛猴はいかがでしょう」
「それはどんなお茶なんでしょう?」
「今ごろの時期に、お勧めしているお茶なんですよ」
「あ、ではそれをお願いします」

香りは特に珍しいものを感じなかった。味わいは非常にスッキリとして飲み口がいい。というより、すっきりしすぎだ。水よりも、山の湧き水がす〜っと喉に入っていく、そんな感じだ。おっと。上の歯の辺りじんわりしたものが来る。段々と上顎へ、そして喉の奥から背中へ、腕へとじんわりが伝わってくる。。。次第に目や頭、腹もじ〜んとしてきた。お茶を飲んでるんだから、温かくなってきても不思議はないんだけど、”神経に何かが伝達されて、リセットされた”ような印象なのだ。身体が、すっきりしてきたぞ。小さな急須の蓋を取って嗅いでみる。へ〜。飲んだ時には分からなかった微かに甘味。丸まった茶葉は3cmぐらいかな。発酵の具合で葉の3割ぐらいが茶褐色。

左能さんの本によれば、武夷山白亜紀の岩からなる山だ。おぉ!葡萄が根を張ってるフランスの大地と同じぐらいの年齢なんだ。だから、いろんなミネラルetc.を含んだ味わいなのだな。ロワールの石灰岩アルザスやジュラの山といったイメージが浮かんでくる。億年単位の大地の成分を吸い上げた木の葉を茶にして飲んでいるってわけですね。毎朝飲んでる日本茶は陽光や風といった風景を想像するけれど、このお茶は何だか自分が根っこになったみたいな気分になってくるものなぁ。この季節、大きく替わる気候にあまり影響を受けずに、しっかりと地に足をつけたほうがいいのかもしれないですね。小さなカップに5杯ほど飲んで店をでた頃には、なんだか体重が減ったかのようになってました。翌日、トイレでも変化を実感(笑)。いや、ほんとですってば。