どら焼きの宇宙@賣茶翁(仙台)


 「何で今日は蝉が鳴いてないんだろう?」

。。。まだ六月だもんな。それにしても蝉は間違えることは無いのかなぁ。この日差しと熱気。なんてことを思いながら歩いていると、歩道の端に石柱が立っていた。”右”とある。ほぉ〜どれどれ。松の樹の横の敷石を歩いて、すり減って丸くなった引き戸の桟に手をかける。

 「いらっしゃいませ。」

お姉さんが律義にお辞儀をして迎えてくれた。突き放した感じでもない普通の家ならば玄関、の真ん中にガラスのケースが鎮座してる。ケースの上には包装紙なのだろう、漉いた和紙が束になっておいてある。薄水色や緑色、ぷるんとした葛に包まれた菓子が並んでる。う〜ん、涼しげ。冷房ははいっていないけれど空気が動いているせいか、暑いというまででじゃない。


 「えぇと、今日はまだどら焼きありますか?」


ダメモトで尋ねてみる。なにせ一日に60個ほどしか作られず、開店時にはまだ無く、11時には売り切れていることが多いと体験を語るブログもあったのだ。


 「えぇと、、、ハイ、今日はまだございます」


おぉ、なんとラッキーな!それだけで仙台に対する印象がグンと良くなったのがわかる。ゲンキンなものだなぁ、我ながら。



 「。。。。」


家に帰ってドキドキしながら開けた包みから現われたのは、どこからみてもどら焼きには違いないのだけど、いままで知っているものとは…なにかが違う。日焼けしていい色に焼けた肌(あぁ、4月の悪夢がよみがえる)。口を蛤のようにしっかりと閉じた姿。オイオイ、そんなにしっかりとどうしたんだい?なんて思わず声をかけたくなってしまうぐらいだ。皮を割る。大好きな上野のうさぎやのそれと違って断面に霜柱がないぞ。それに外側とは対照的に眩しい色あいだなぁ。ぱくり。


きっちりと甘い餡。でもそれが残らない。ぱくり。何か砂糖が違うのだろうか。ストレートな甘さじゃない。そして最後に、あのふんわりとした”皮”が口の中を拭ってゆく。ぱくり。う〜む。なんだろう、これ。今まで食べた菓子とは乗っている軸が違うのか、というより世界が違う気がするのはなぜだろう。。。ぱ…と思ったらもう無かった。えぇ〜。おーい(T_T)