いつも新鮮な老舗は、ただいま変身中@プティ・ポワン(フレンチ、東京・広尾)


ロンドン出張の前に、誘われていろんな”いい”お店に行っていたのだけど、書く余裕がなく飛行機に(-_-;) 例えば、銀座の蕎麦屋”泰明庵”(二階の居酒屋が楽しい!)に、梯で行った”Bar橋”。銀座の巾というか懐の広さはどこまであるんだろう(笑)。そして、開店30周年の広尾のフレンチ・プティポワン。実は、改装のため9月22日からお休みして、11月3日から新装オープンだそう。今度は一階をカジュアルなカフェ風に、二階をレストランという形式にされるとか。そんなこととは全く知らず、一階レストランでひょっとしたら最後の客として、いい夜を過ごしてきました。


実はこちらのお店に行ったのは、メモを見返すともう4年も前のこと(^_^;)。印象に残っているのは、肉と、皿。牛コンソメは、スッキリとしたジュースのような味わいだったし、フォアグラは生まれて初めてこんなに美味いものなのかと驚いた。ミントグリーンとグレーを直線的に使った模様の皿は、そのモダンな印象な色の組み合わせがとても新鮮で、しばらくプレゼン資料にその組み合わせを用いたりもしました。そんなこともあり、今回はどんな発見があるだろうかとちょっとワクワクして出掛けたのでした。


最終日ということで、メニューは"お任せ"のみ。で、こんな具合でした。

フォアグラのソテーと大根のコンフィ
カリフラワーの冷たいポタージュ
舌平目と煮込まないラタトゥイユ
骨付き小羊肉のゆっくり焼き
レモンマートルのスフレグラッセ


食前酒にシャンパン。二種類あるうちから、すっきりした感じの方をリクエスト。扉の陰で「ポンッ」という音が響く。明日は営業がない夜に何だか申し訳ない気持ちもするけれど、ありがたくいただいた。身体の中央から少し熱い感じがひろがってきて、エンジンがかかる気分。四角い皿にオリーブオイルが注がれた。隣の皿には何やら粒々の山。なんだろう?「こちらは、塩やクミンなどのスパイスを何種類も混ぜて作ったものでございます。お好みでパンに少し付けてお召し上がり下さい」ほぉ〜っと早速試してみる。。。うぅなんだ、これっ!。。。これだけでいくらでもパンが進んじゃう。塩味は分かるけれど、ブレンドされたスパイスの妙味というか複雑さは空腹の胃にシャンパン以上の効果がある。は、早く前菜を〜(笑)。


コンソメおでん(大根)のフォアグラ載せ。表面がかりっとして中がふんわり柔らかいフォアグラが、味の染みた大根の上に鎮座。一見違う性格の二つをバルサミコが田楽味噌のようにつないで、大根がフォアグラを拭うようにしながら一体感のある味に。そして最後にアルザスの白(ゲベルツ)がそれをさらに引き継いで高見につれて行ってくれるような。。。ちょっとオーバーかな(苦笑)。でも、一皿目から一気に感覚のエンジン全開状態。


そんな気分を少し落ち着けるように登場したのは、足の長いグラスにはいった、カリフラワーの冷たいポタージュ。カスタードクリームのような食感で食べる感じ。カリフラワーのようでそれだけじゃない、さっぱりしてて複雑さ。こういうものを前にすると、自分の言語力の無さというかその前に想像力の貧弱さが露になっちゃいます。。。。後で伺ったら、カリフラワーにホンの少しカレー粉が加えてあるそうな。う〜ん。


フランス料理って、重ね合わせることを得意とするものなんじゃないかと思う。何かが表に目立ちすぎることなく重なる。その傾向は、料理だけじゃなくてフランス的なものの特徴なのかもしれない、なんて気もする。例えばZARAというショップのウィンドウには銀座がほとんど黒系で統一したモノなのに対して、パリはちょっと明度を落とした色合いの見事な重ね着が並んでたり。思いつきだけど。


舌平目は、その下に蒸らし炒めで食感を残したようなラタトゥイユを隠して登場。その周囲に野菜、魚、そしてハーブやオリーブオイルなどが溶け合ったスープのようなこの贅沢なソース、残したくないとパンでひたすら拭ってしまう。硝子の皿の上で中に浮いているようにも見えて、視覚的にも楽しませんてくれました。

ところで、たんぱく質が固まるのは60(〜70)度以上なんだそうですね。それでは温度をそれ以上上げずに火を通した肉はどうなるのか?というと、こうなるんだそうです(。。。聞きかじりです)。むぅ。火の通った刺し身、なんて言葉が浮かんでしまった。焦げ目、無し。脂身、プルンっとしていない。見た目はミディアムレアだけど、血のような肉汁が滴っていない。でもこういう調理法だと、元々の肉の質がもろにでてしまうんじゃないのかなぁ。いやぁ、赤ワインが進む。ところで、一緒にフィンガーボウルを持ってきてくれたのだけど骨はきれ〜いに下処理されて手でつまんでも全く脂も付かない状態。いや、いつもそこまでして欲しいなと思うわけじゃないんですよ。でもこのお店の姿勢というかトーンが、味だけじゃない面にも一本通っているんだな。。。というのが気持ちいいです、ホントに。こういうところまでは前回は分からなかったなぁ。

(相性の会う)いいお店というのは、自分の変化や楽しみ方を感じさせてくれる、まるで柱の傷のような存在なのだな、きっと。。。三回目は、特別な日じゃなくても行ってみようか。

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