ライブをTV的感覚で。恐るべし、歌舞伎。


何となく遠巻きにしていた…わけじゃないけれど、この歳で歌舞伎初体験。一言で言うと、「なんだこれ〜っ面白い!」。何がそんなに面白かったのか、素人が、失礼しま〜す。


まずはそのエンターテイメントの形式に驚きましたっ。目の前で繰り広げられる横に長〜い別世界を、飲んだり食べたりしながら楽しめるというそのツクリ。こんな世界、あったんですねぇ。今回は桟敷席というのが残念ながら取れなかったんだけど、それでも幕間の30分休憩にお弁当食べて、店ぶらついて。歌舞伎座の中にこんなにたくさんの店があるなんて、世の中の人は知ってるんでしょうか?わたしゃ、思いもよらなかったなぁ。それも、浅草以上!?、黄楊の根付け、佃煮、草履やさん、人形焼き(焼いてる!)etc.もうお祭りです。そう、気分的にはライブの場でカウチポテト(死語ですわね…^_^;)!舞台に引きつけられれば手は止まり目は釘付け、一息ついたらごっくん状態。ウ〜ン、いい気分。


今回観たのは、吉例顔見世大歌舞伎というやつ(…言い方になんとなくプロレスを思い出すのは何でだろう?)で、「宮島のだんまり」「仮名手本忠臣蔵・九段目山科閑居」「土蜘」「三人吉三巴白波」と四本立て。通しで一つのストーリーが演じられるのではなく、全く違ういろんなお話の"ある場面"が四つ(バレエでいえば、ガラ公演にあたるのかな)。イヤホンガイドも借りず、事前に元の話の筋も読まずという状態で席に着いたんですね。ちらりと「ちと無謀かな…」と思ったけれどエイ、ままよ〜。はじまりはじまり。


のっけから主役級総出演でカーテンコールやってるみたいな「だんまり」でびっくり。それでいて誰もが同じように目立ってる。衣装の色やカタチ、振りで恐らくキャラクターの違いを出してるんですよね、あれって。「九段目」や「三人吉三」は話の展開に個人的にはちと無理やりな気もしちゃう部分もありましたけれど、舞台セットに目が釘付けでした。雪の積もる道から屋敷の庭、そして屋内へと左から右へと時間が巻物のようにつならる「九段目」。屋敷の塀や屋根、川などが、前後の色の対比でステレオカメラ(レンズが左右に二つ付いてるやつです)で写した写真のような立体感をもって横一文字に層を成す「三人吉三」。そして、動きの「土蜘」。楽者を奥一列に配した広い空間が、屋敷の中に、森の中にとどんどん替わる。そして出ましたっ!蜘蛛の糸(←やりたいなぁ)が花火のように手から扇状に放たれ…すかさずそれをかき集める役の人がいてこそ動きが次から次へと繋がっていく。きっと周りからいろいろなきっかけをもらって、バレエ、文楽狂言、落語をちらほら観たから、あれこれ目に付くんじゃないかと思うんです。衣装のデザインや配色も、ユニークなのにとても楽しい。「いやぁそうくるの〜!」と何度も無言で叫んでしまう有り様です。


音楽や語り(義太夫)は生、舞台の上で堂々と着替え(早替わり)たり、黒子もきびきび立ち回る。いないもの、みえないこと、そんな了解ごとが舞台の上の人の衣装や姿勢によって表される(みたい)。「おぉ、もしかしたらこういうことかも」なんて、女形の階段の降り方と男役のそれの違いをみながら想像が膨らんだり、ディズニーとは逆で決めのポーズで止まる前に首をゆらりと振ってみたり。あちらこちらで感心したり納得したり、いや〜すごい、すごい。はぁはぁ(^_^;) そんなふうに、いろんなことが見えて聞こえて、あぁお腹一杯いただきましてございます(笑)。