泡盛、好きですか?


沖縄に毎年行くようになって、泡盛を飲むようになりました。試したものがおいしいと、泡盛そのものに興味が出てきて、東京にいる間もなんだか気になって(笑)。銀座のわしたショップで試飲できるものや店員さんのお勧めなどを、あれこれ試してました。結局何種類も飲んでみて何となく分かったのは"一口に泡盛といっても、結構味の個性に違いがあるもんだ"ということ。その中には、もう一度飲みたいと思うものもあれば、もういいや…というやつも。ならば、味の違いの理由がわかれば、自分の好みのものに出会える確率を上げられるんじゃないか?と(笑)。結局未だに、"腑に落ちる"ものに突き当たってはいないのだけど、先月久し振りに醸造所の見学をしていろいろ教えていただいたことがあるので、いままでのあれこれを整理する意味でメモ。

日本酒だと、酒米の種類と水の質の組み合わせだけでもいろんなパタンがあり得ます。これに酵母とか地域による気候や、一緒に食べる食材なども絡んできますから、味わいの違いがあれだけ出てくるのは納得感があります。ワインも、然り。でも、泡盛って基本的には材料砕いたタイ米で同じ。水だって気候だってあの小さな島々ですから大きく違うなんてことは考え難い。食べるものは大体同じといってもよさそう。なのに、はて??。あ、どんな違いを感じているかというと。。。


横軸が舌触り・飲み口で、"とろり"〜"ピリリ"。縦軸が香りで、”ほわり"〜"キリリ"としてます。

そして、こんな図を考えながらあれこれ飲んでみて思うのは、

    • 「ピリリ×きりり」なタイプが多い
    • 自分の(今の)好みは、「とろり×ほわり」…右上の☆印の象限

とろりタイプのものは、まず口に含んで柔らかく、味わい深い(抽象的…)。それに対してピリリなものは、如何にもアルコール的な刺激を強く感じ、やや薄っぺらい印象。ほわりタイプのものは、とうもろこしを連想させるような複雑で豊かな香りがありますが、キリリなものはストレートでシンプルな傾向。今のところは、こんな分け方に落ち着いています。そして泡盛には古酒(3年以上寝かせたもの)という種類がありますよね。それについても、疑問は深まってしまいます。

    • 古酒でも「とろり」になるとは限らず「ピリリ」を強く残しているものもある(もっとも数年前に古酒の表示基準が変わったから、それ以前は配合比率が低かった…ということも影響してるのかもしれませんが)
    • 一方新酒でも「とろり×ほんわり」系がある
    • 首里とか那覇というように狭い地域にある蔵同士でも味の違い(例えば、"とろり"と"ピリリ")がある

酒販店でも聞いても、飲み屋料理屋で聞いても、さっぱり掴めません。こちらも自分の感覚ですから、どう表現したら理解してもらえるのか手探りな状態ですし。そんなこんなであっという間に5年以上経っちゃいました。

  • ヒント

作り方はやはり基本的に同じようで、例えば酵母は101号(泡なし酵母)というものがほとんどデファクトスタンダードなのですが、各工程への時間や手間のかけ方にはいろいろ違いがあることが分かってきました。

    • 蒸した米に麹を付けて繁殖させる時間は24時間が多いらしいが、72時間という蔵もある
    • 麹米、水、酵母を合わせ醸造する時間も普通は2週間程度だが、3週間以上掛けるものもある
    • 沖縄にも軟水がある
    • 蒸留後に浮いてくる「アブラ(高級脂肪酸)」の取り除き方・残し方で味に違いが出るらしい
    • 蒸留後の熟成はステンレスタンクを使うものと、瓶によるものがある

どれがどれだけ、味の違いにどれだけ出てくるのかは相変わらず不明のまま。ただ例外もありますが、粗く言えば「量が多く出回っている銘柄にはピリリ×シャープが多い」気がするのです。数軒ですが見学させていただいた蔵の方たちは「アブラはとらないと味が劣化する原因になるが、全部取ってしまうと辛口になる」「アブラの取り方は、手間がかかるがうまく残すとまろやかさに繋がる」などと言われていました。どうやらこの辺りが自分の好みの味の近いかどうかに効いているように思います。量を多く作るには、手間のかかる処理の方法はなじまないだろうし…と。とはいっても、味の違う理由は絞り込めてきたのかもと思うんですが、"初めて飲む泡盛でも自分の好みに合いそうかどうかを予測したい"という当初の目論みまではまだまだ。でもそんな中でいろんな泡盛にであって、好きな銘柄とそれを作ってくれている蔵の場所も、那覇首里からはじまって、金武、山原、石垣、波照間などへ拡がってきました。違いを予測したいのか、好みのものによりたくさん出会いたいのか怪しい気も…(笑)。



一回の仕込みから完成までが、一ヶ月弱でできて、一年中それを繰り返せる泡盛。日本酒のように年一回の仕込みに一年を掛けるようなある意味リスクが大きく、(それなりの量を作るためには)大きな設備が必要な酒と違って、小規模な蔵が多く街中にもまだ健在してるのにはそんな理由もあるのだと思います。そんな日本酒は今、消費量が落ち込んで苦しい状況だとか。小さな醸造所が多い泡盛は、消費変動の影響をもっと敏感に受けてしまうはず。那覇の街を歩いていたり、東京の酒類量販店の棚を見る限りではまだそんな気配は現れてはないようですが…。
それよりも気になってしまったのが、島の水。というのは、沖縄本島の多くの川が今その力を失っているという話を聞いたんですよ。開発で木が減ったりすることで土が川に流れ出し、溜まってしまう。その結果、川が水を海に流し出す力が弱くなっているというのです。島の川は上流から下流までがとても短いので狭いまま海まで一気に注ぎ込みます。それがよどんでしまう。"上流で森が無くなると魚介類が激減する"というのは、本土でも聞く話です。こういう積もり積もっていく変化というのは、影響がハッキリ分かった時には深刻なことになっているんじゃないか。。。いろんなことを思いながら、お気に入りの豆腐ようを冷蔵庫からだしてきて、グラスでカラカラと氷を鳴らしてます。