昨日終わってしまった、おいしいイベント(その2)@志の輔らくごinPARCO2009

昨日二十七日は、五日に始まった志の輔らくごinPARCO2009の千秋楽。またひとつ、おいしいイベントが幕を下ろしました。今年の三席は、「ハナコ」「狂言長屋」「柳田格之進」。一ヶ月通して同じ内容だったようです。


「あらかじめ文化」。以前、なぜか急に濁らなくなった温泉地で入浴剤を入れてしまっていた事件を枕に取り上げ、「…せっかく楽しみに来てくれたお客さんに"悪いから"」と日本人の気持ちの習慣を取り上げたこともある志の輔さん。とうとうそれを、こんなふうに命名したんですね(パチパチ)。相手よりも先に、謙遜しつつ断りを入れる。相手のために…という呪文を口にしながら目的と手段が入れ替わってしまう、言動の数々。そんなことから、さる温泉でちょっぴりホラーな(?)話が展開してゆく、「ハナコ」。

あらかじめ、全てのお客様に笑っていただけるかどうか分からないことをお断りしておきます

始まりもこんな具合、枕と本編の境目は限りなくあいまいという、意欲的な(笑)新作でした!


狂言長屋」では、またまた狂言茂山家の人々とコラボレーション。極めて私事で恐縮なのですが、これを見た後には

 ぁぶナぃ♪

という合いの手が、振り付きで我が家の会話の中に登場するようになります(笑)。それにしても、狂言の声の使い方というのはつくづく落語とは違うものですねぇ。横笛の鋭い音と同様、客席(今回は前から六列目でした)で"波"を感じます。志の輔さんが、はっきりゆっくりセリフを口にしていたのですが、途中から怪しい外人さんのようにも聞こえてしまい(笑)。狂言のセリフというのは、歌であって、唄うものなのではないか…と思えてしまいました。
志の輔らくご”の世界は、時に落語を触媒にしながら様々な芸能への扉を開いてくれます。周り回っていろいろな芸能が盛んになれば、桶屋が儲かるように!?落語だってもっと楽しまれているはずだ!ということなのだと思います。確かに、ある一点をどうにかしようとするならば、その周囲から状態を変えないとその場凌ぎになってしまう…ことは、日常でも珍しくありませーん。例えば、肩凝りとか、懐しい一夜漬けとか(爆)。


さて、2009年PARCOのトリは「柳田格之進」という古典モノ。しかも、笑いで終わる噺じゃないのです。娘が吉原に…なんていうのが重要な絡みですから。さて、志の輔さんはなぜこれを持ってきたのだろう?最後のシーンが正月明けだから?ウ〜ン、それもあるとは思うんですが、それだけじゃないだろうと思うんです。一本気で誠実な主人公、旦那と番頭のやりとりを通じて何か伝えようとしたことがあったんじゃあなかろうか。もしかしたら…「あらかじめ(あなたのためだと思うので)言っておきますと…」なんていうことでガラガラと状況が変わっていく様を、現代物の「ハナコ」と古典の「柳田格之進」で表したのかなぁと思ってみたり。


さて、今年は何度志の輔さんを聞けるのだろうなぁ。まぁ、でもまずは、兎にも角にも長丁場を乗りきった志の輔師匠、ありがとうございました。そしてお疲れさまでしたっ!