談春山で花見の宴@立川談春ひとり寄席(下北沢711)+独演会(神奈川県民ホール)

この一週間、メタボ化まっしぐら〜!なぐらい、たっぷり落語を堪能させていただきました、ハイ。ブロッサムの志らくさんと、久し振りの、そしてやっと今年最初の談春さん。い〜い気持ちです。もう、食べられないぃ。この二人の師匠が座布団の上から発し包み込んでくれる、世界の作り方・描き方の違いが面白いから、こんなになっちゃったんです。志らく劇場と談春シネマ。たっぷり。


志らくさんは、極度の映画好きだそうですが、一時期落語が危なくなっちゃったほど芝居にのめり込んだとか(「雨ン中のらくだ」)。今はそれほどではないにしろ、2月には公演をしていたほど"道楽"だそうです。察するに映画でも人物を中心に、いろんなことを楽しまれているのではないでしょうか。それ故、登場人物の視点からストーリーや気持ちを突き詰めていくのではないかと。そういう視点からの、突っ込んだ解釈や人物描写が特徴であり、持ち味ですね〜。そんな人物に、時に取り憑いたように、時に壊れちゃったような噺っぷりが、ここのところ一層キレているように思います。パチパチ。
談春さんは、自分のことをあまり語ることは無いように思うので、特徴的に思えることの背後にどんなものが潜んでいるのかは、まだよく分かりません(「赤めだか」、やっぱり読まねばいかんかなぁ…)。感じるのは、映画のようにその場の光景や俯瞰した情景が、セットになってこちらを包み込んでくること。でも面白いのは、映画で感じるような没入的なものじゃなくて、俯瞰している感覚が伴っていることです。そんなふうこちらが思える時が、あぁ今日はよかったな〜と終わった後にじんわりできる時だと思います。と、まあ、そんな自己解釈はどうでもよろしいのです(苦笑)。

立川談春ひとり寄席@下北沢711(2009年3月16日)

月曜日(下北沢)、地震があったら崩れるんじゃないか?なんて隣席の人が友人と話しているぐらいの風情を醸し出す"小屋"で、談春さんは100人をきるであろう観客を前に、一人寄席を演じました。前座(小町)〜二つ目(長短)〜色物(お弟子さん三人と、四人囃子)〜仲トリ(長屋の花見)と続き、喰い付き(短命)〜真打ち(三方一両損)。コース料理をきっちり演じあげ、お疲れさまでした!
昨年、昇太さん、市馬さんと組んで前座噺をやる会がありましたから、それ以来の前座かな(笑)。妙に風格がありすぎる前座、二つ目ですゥ。それにしても、座布団のさらに前、ホントに目の前で四人囃子・木魚を持ち踊る談春さんは、クールな表情のお弟子さんとは対照的な面はゆさ。今年初高座を、珍しいものも含めて楽しませてもらいました。それにしても、こんなに客席と近いスペースってやりにくかったんじゃないでしょうかねぇ。地味にみえる着物が結構おしゃれな切り返しだったりなんていう、普段とは違う部分まで新鮮でしたけど、語るエネルギーを放射する加減や、それに対する反応も数百人規模の会場とは違うでしょうし、それ以外にもいろいろ目に付いちゃいますでしょうから。。。終わって外にでたら下北沢演芸祭をプロデュースをした昇太さんが下り口のところで一人一人に挨拶をしてくれていました(ベレー帽のお方です)。なんだか恐縮です。

立川談春独演会@神奈川県民ホール(2009年3月21日)

横浜(土曜日)の独演会、談春さんは再び羽織を着ずに登場しました。え?デジャヴ!? こんなところから楽しめちゃって得した気分(笑)。実は、この後に二つ目になった志の八さんが登場するのでそのことを伝えることやなにやらをトーク。気軽さからか、志の輔志らく談春各一門の師匠と弟子の関わり方というかスタイルの違いとかを話題に。う〜む、こりゃ面白いですねぇ。曰く、「厳しい・ほったらかし・気分屋」なんだそうです。わはは。
談春親分が志の八さんへの拍手をよろしく〜といって下がった後、ものすごい拍手の中黒い紋付きで座布団に座った志の八さん。しっかりとその流れを継いで、只今ベトナムへ行っている師匠との逸話をきっちり聞かせてくれました。いや〜二つ目になるとこういう噺をできるようになるんですね、きっと(笑)。雰囲気も二月に志の輔さんが紹介して上がった時よりもずっと落ち着いて、「花色木綿」を楽しませてくれました。ちなみに、花色というのは明るい藍色らしいですねぇ。


続いて再登城した談春さんは、「花見の仇討」という噺。東京で開花宣言があった日、季節もの。こういう楽しみ方って江戸の風情なんでしょうねぇ。花見じゃなくてかこつけて、数人寄るとふざけちゃう。打ち上げ花火よろしく一瞬の輝きに全てを?かけちゃう。そうこうする内に、段々エンジンが掛かってきましたよ〜!

この日のトリは「鼠穴」でした。普通じゃない状態で久し振りに再会する兄弟。よく通る声も加わって、情景が拡がり、結果として人物が浮き上がってきます。歯を食いしばって這い上がってゆく弟、ぎくしゃくした気持ちを抱いて再び対峙する兄弟、そして火事で全てが燃えてゆくシーンetc. そしてちょっとずるい?終わり方。ぐいっと持っていかれて、トンっと着地。

(しばらく人情噺はやらないといってましたけど)下北沢で前座からはじめて一人で何席もやって二日間終わったら、無性に人情噺がやりたくなっちゃったんですよ。最初に言った通り、気分で生きてますから(笑)

少々照れ臭そうに、終わった後にそんなことを口にする談春さん。人情ものって中心は人だから、そこにフォーカスしてるだけだと、これでもか〜って臭くなりすぎちゃうんでしょうね。それを引いたり寄せたり、巧い具合にみせてくれます。それにしてもこの兄弟、ホントに兄弟なのかなぁ。やりとりを聞きながら、談春さんと志らくさんがチラチラと重なるように見える気がしたのは、今週それだけ堪能したから…かしらん(笑)。

会が終わっても座布団に座ったままで見送ってくれた、談春さんです(幕が無い舞台ってお互い照れ笑いしちゃいますね)。ひと足お先に花見を満喫した気分です。ありがとうございました〜!。。。そろそろペース落とさなくちゃなァ(爆)。