ただいま、感染中。〜立川談笑・月例独演会(2009年5月12日@国立演芸場、半蔵門・東京)


昨日は、会社をそそくさとでて、国立演芸場へ。ええ、フレックス・タイムは有効に使っておりますよ。それにしても、何で劇場や演芸場が、こんな文化とは一番遠そうな場所にあるんだろう。ほっておくと、芸人が何するかわからんからかな〜?小ぢんまりとしてるけど、赤じゅうたん。売店もある。さすがは、国立!?


"志の輔らくご"しか知らずに生きてきたぼくが、何を思ったか、「他の世界もあるのかもしれない。ちょっと覗いてみようかな」と、気まぐれで足を踏み外し、いや踏み入れたのが昨年9月。まったく違う系統ではなくて、同じ立川流で聴いてみよ〜っと、志らくさん、談春さん、談笑さんといってみた。談春さんとの出会いは、志の輔らくごへの飛び入りということもあり、まったく自然に入った。志らくさんは、前にも書きましたけど、いいなと思いつつ、しっくり来ないこと四ヶ月。いまじゃすっかり菌に感染し、筋ができちゃって、この筋使わないと調子が悪い。
さて、談笑さん。この二月から、月例独演会へ。ところが、こちらもいいんだけど、しっくりこないところが。ええ、もうわかってます。原因は、自分。今まで食べたことのないものを、はじめて食べてうまい!、と感じられる味覚体系がないことなんか、珍しくない。それに、志らくさん体験でわかってきたことが、もう一つ。落語会の楽しみ方は、"その場その時"だけじゃなくて、"連続性"もある。演者が、何かに取り組んでいたり、進化しつつある状態を、目の当たりにできたり、一緒になってもがいたりできるのも、独演会の面白さ。


にっこり笑って会場を見て、すたすたと、いつも通り袴姿で、談笑さん登場。この、登場のしかたというか、振る舞いにも、すでにその人がでていて面白いですね。さてこの日、「道具屋」「千両みかん」、中入りを挟んで「品川心中」というラインナップ。「品川心中」は、はじめてでした。
最初の二席、登場するのは、旦那と与太郎、旦那と番頭に若旦那。「お〜い、与太郎」「…またなにか仕事させようって噺?」あるいは「番頭さん、ちょっとこっちへ来ておくれ」「は〜い、旦那様…これは、Aの噺か、あるいはBか、それともCの噺?…」いろんな噺に共通して登場人物が、シャッフルされたみたいに、現れては消えていきます。あれこれ聴いて半年以上経ったので、なんとか半分ぐらいは、そういう中で振られる落語ネタの笑いに、ついていけるようになってきましたけど、そういう点、独演会って濃いです。


一席目は、最初に告白。「(この噺)うろ覚えなんです」。。。「この間やったときは、うまくいったんでなんとかなると思ったんだけどなぁ」。
二席目では、なんと客席最前列に、若旦那が仕込まれていて(?)、高座にあがっちゃいました。おぉー。高座に上がったあなた!、楽しませてくれて、ありがとうございました!談笑さんが、懐からとり出したみかんを、食べて、幕。
最後は、間をたっぷりとりながら、やんちゃな持ち味を押えて、じっくり、じっくりと。


5月3日の志らくさんとの二人会@読売ホールでは、「黄金餅」をみごとな噺っぷりで、堪能させてくれた、談笑さん。力量は、十分。その人が、独演会では、何かを試すように、そして探すように、場を作っている。そんなふうに、感じました。例えば、人物の詳細な描写よりは、関係性。場面の描き込みよりも、普遍性。何だか、そういうものの向こうに、談笑さんがやってみようとしている落語が、あるのかもしれません。独演会では、そういう過程も、そしてその先も、一緒に体験できる…かも。明後日売り出しのチケット、チャレンジ!