あと一回。区切りの新宿、月例独演会@志の輔らくご(2009年10月21日)


1月のPARCO、4月の銀座。TVでいったら特番みたいな会じゃないかと思うんですが、今年チケットが取れたのはそれぐらい。昨日は、今年初めて行けたいつもの新宿の独演会。今年で終わるらしい…という話しを聞いていたので是非とも行きたかったんです。人気があるから仕方がないのですけど、生まれて初めて聴いたのが確かこの新宿の会。そんな訳で、ちょっと力が入ってました。


この会、毎回ロビーゲストが登場します。会場の時刻から、開演直前まで、それぞれのパフォーマンスをロビーで披露してくれる。開演に向かって、こっちも段々いい感じになってゆくんですね。で、昨日は、栗コーダーカルテットが演奏してました。あ〜もっと早くから来れればなぁ。。。なんて思いながら、それでも三曲楽しんで、席へ。


今更ながらに気がつきましたけど、舞台の照明や、季節の切り絵の投影、志の輔さんの着物など、どれもがきれいな色。こういうところも、観る方の気持ちを高く保てるような工夫のひとつなんじゃないかって。そんな一方で、志の輔さんの草履、ぴかりと光ってなかなかおしゃれ〜。客席からは一瞬しかみえないところで、楽しんでるんですね。

前座は「金明竹」。初めて聴く方。落ち着いた感じで好感が持てます。話し方、身振りなどで演じ分けってやっぱり難しいんですねぇ。
さて志の輔さん。マクラはたっぷり、黄門様ばりの諸国漫遊談。宮崎でなぜか「六人の会」が"主催"した(せざるを得なかった)落語会のこと。そして、諏訪の松茸山での一年おきの落語会。携帯もつながらない山の村。ガードレールも途切れがちな途中の山道は、分かれ道でどちらに行くかが時に命運も握る、というお話。ひょっとしたら、高尾への長い伏線だったりしたのかしらんなどとも思ったり。
一席目は、「猫の皿」。もしかしたら、本島の主役は猫の"其之八"かも。相手が猫だから、オーバーなぐらいのやりとりが成立し、掘り出し物の道具を求めて旅する男のアップダウンがストーリーになるんでしょう。これが犬や狸じゃ、ねぇ。猫に投影する悲喜劇への込め方に、演者の、人間にどんな目線を注いでいるかというかが現れる気がします。

さて、ここでこの会の名物、仲入りマイム・松元ヒロさん。初めてみた時と風貌変わらなず、何だか時間がヒロさんのところだけ留まっているよう。キレのいい、ウィットの利いた、大人のクレヨンしんちゃん


〆は「紺屋高尾」。柔らかく着物の裾を折って座布団に座ると、紺屋職人の親方に。おっと〜。連休前の会で、立川談笑さんがかけてくれた噺ですよ。9月の二人会では、立川志らくさんもかけてくれましたし、ラッキー! 志の輔版は、どんなところに注力されたのかがとっても気になります。。。与太郎でも若旦那でもない、ちょっと今風にも思える久蔵。茶目っ気たっぷりの、親方。あぁ、志の輔さんの紺屋高尾は、男の可笑しさ面白さがでてますね〜。高尾大夫に焦点を当てて、意表をついた談笑さんと対照的。


いったん幕が下りて、いつものように再び登場の志の輔さん。来月がここでの千秋楽であることも話されていましたね。う〜ん、10年ですか。何も知らずに初めて落語に連れてきてもらったのは、その頃だったのか。誘ってくれた方に、改めて感謝!です。それにしても、新しいことを始め、実績や成果を得て、自ら区切りをつける。自分にできているとはまだまだ思えないけれど、背筋がピンとしてみえるもんですね。
それから、加藤和彦さんの思い出。自分のラジオ番組にゲストで来てくれた時のテープを聞き返したこと、今でもサディスティック・ミカバンドの「黒船」を愛聴してることなどを。そう語る姿は、涙ぐんでるみたいな雰囲気を身体から発してました。


いろいろなこわばりをほぐしてもらって、気持ちよく温泉で温まってきた…てっぺんまで盛り上がるのではないけれど、席を立つお客さん達から、ほのかに湯気がみえるようなこの感じが、志の輔らくごの力なのだと改めて思いながら、二次会へと。