東西蕎麦屋梯子之巻@加辺屋本店(博多、福岡)&泰明庵(銀座、東京)


店の雰囲気は、その店の姿勢。それを選ぶことも、時に身を任せてみるのも、なかなか楽しい。そしてそれがその時の気分にピタリとはまった時は、嬉しいもんだ。ひとりの時はもちろん、久しぶりの友人との再開はなおさら。以前はこういう楽しみ方をするだけの"分"がまだなかったなぁと思う。そんな自分の変化を発見するのもいいもんだ。福岡と東京で、二晩かけて梯子蕎麦。



先週の博多出張の夜は(昼にたっぷり食べたこともあって)おとなしめにすることに。ラーメン…も考えたけど、蕎麦にしてみた。うどんは食べたけど蕎麦はまだだし、そもそもうどんやラーメンが有名なこの地で蕎麦ってどんなもんなんだろ?という好奇心もあったし。ってことで出向いたのは、中洲川端博多座の脇、店の看板もまばらな筋を入ったところにある加辺屋。新しめの建屋だけど、それを前面には出していない表。暖簾をくぐって…その先に見える戸を開けて中へ。まだちょっと早い時間ということもあって、先客はお一人。こ奇麗な店内は、電灯色の赤っぽい灯で落ち着いた印象で思ったよりも広い。奥のほうの椅子に座り、さてっとメニューをみると、ありゃ。つまみが載ってないわ(^_^;) 「おーい、お兄さーん!」


「つまみは、天ぷらの盛り合わせか板わさになります」
「じゃ、板わさと、この焼酎の蕎麦湯割ね」
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「お待ちどうさまでした」
メタボな形状の湯飲みにたっぷりとはいった不透明な焼酎、そしてうぅ、何でこんなにあるの〜!?という板わさ八枚。おまけに厚みたっぷり。これで一人前とは恐れ入る。〆の前から蕎麦湯を飲んで、蒲鉾、ぱくり。ひとりで蕎麦屋でこんな時間もいいもんだ。。。なんて自然にできるようになったのね〜と思いつつ。で、蕎麦だ。この店は"くず蕎麦"なるとろみをつけた温かい蕎麦もあって迷ったけれど、"おけ蕎麦"にしてみた。釜揚げの蕎麦を熱い汁につけて…というもの。ちょっと甘めの汁には海老展が一匹入ってる。蕎麦湯に浸かった状態で蕎麦が出てくるというのも面白いもんですねぇ。出雲蕎麦ってもっと太いものだと思ってたけれど、ここのはそんなことないんですね。あつっ。おぉ不思議だ。いわゆる丼に入った蕎麦よりずっと熱い。



翌晩はは東京・数寄屋橋の裏手にある、泰明小学校の前の路地。一本筋が違うだけでここは昔ながらの店が残っているようだ。店の看板も近ごろの眩しいやつじゃなくて、柔らかい明るさ。で、蕎麦屋は泰明庵。階段で二階に上がると、壁にはずらりと手書きされたメニューの短冊。蕎麦はもちろん、刺し身から煮物、揚げ物、珍味と所狭しとぺたぺた。もうそれだけで元気な雰囲気。遅れてくる一人を待ちながら先に二人でまずはビールから。「えーと、刺し盛り二人前と、海老芋ね〜!」

「おー皮はぎだ。肝もある(^_^)」
「このきめ細かいねっとりさ、いいねぇ」
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なんてはじまって、そのうち残りの一人も加わって、だし巻き、さつま揚げ、穴子天などなど。互いに近況を紹介し、これからやりたいことを語りつつ、時間が過ぎる。〆は、もちろん蕎麦。
「すいませーん、芹蕎麦!」
「根っこは?」
「入れてっ」
「ハイ、根っこ入りね(^_^)」
。。。う〜ん、この香りいいなぁ。酔いが回った頭から霧が晴れるような…気がする。三人とも一気に食べ尽くして久々の集いも終了。さて、次は何時になるかなぁ。



  • 泰明庵 東京都中央区銀座6-3-14 (電話:03-3571-0840)日曜祝日休み