新芽の命の力@青柳茶(船本製茶、旧五家荘・熊本県)


なんてお茶だろう。。。湯を注す前の乾いた淡い草のような香りが一変して、水中花のように開いた。煎茶だと、焼き海苔のようないい香りがけっこうしていても、煎れたお茶にその香りはしなくなるように思うから、まるで正反対。紅茶の持つ乾いた印象の香りとも違うし、身体にどんと効く岩茶のインパクトとも別物だ。スッとしながらも刺激を感じるようなものではない。ワインでいえばソービニオンブラン、ハーブでいうならミント系かローズマリーをちょっと思わせるけど、あんなに強くてはっきりとした香りじゃない。それらよりは、雨上がりに晴れ渡った朝の森の空気…だなぁ。


なんて感じてから、30分ぐらい経過。朝食に食べたマンゴーのジャムにもマヌカの蜂蜜(どっちもしっかりしてる味です…^_^;)にも薄れることなく、一煎目の余韻がまだまだ強く残ってます。そんな中で二煎目へ。少し葉の中のほうの味が出てきたのかな。スッキリだけでなく味わいに複雑さが増してる。それにしても、この香り。ずっと口中に留まり続けてる。もう笑っちゃいます(^_^)。口から鼻、頭から神経を通って、まるで信号が伝わっていくかのように、手や足までが段々と目覚めていく気がします。茶が古来、薬として用いられていたというのが今なら身をもって分かります。それにしても、身体がへばりがちな梅雨の前にこういうお茶が飲めるようになるというのは、なんとも巧くしたものだと思います。



季節を感じ難くなったとはいっても、まだまだいろんなところにそれを感じることができるように思います。5月の終わり頃は、毎朝飲んでるお茶、釜炒り茶ができる時期です。蒸して作る煎茶がほとんどを占める中で、中国からお茶が伝わった頃の古い製法で作られる、手間のかかるお茶です。煎茶に比べてお茶自体の色はおとなしいけれど、すっきりした味わいと香りが楽しめます。熱めの湯を注ぎ、手早く入れるというのも気にいってます。今年は、いつも飲んでる釜炒り茶の他に、"青柳茶(という釜炒り茶)"も取り寄せてみました。どちらも同じところで作られているので、その印象の違いにびっくりしたわけです。青柳茶というのはどういう釜炒り茶のことをいうのか? 手元にあるお茶に関する本を漁ってみたけれどどうにもはっきりしません。元々は熊本辺りの山間部で作られていた釜炒り茶を特に指すらしいこと、茶葉を煎る際に使われていた釜の形態にも特徴があるらしいこと…までは複数の本に記載があるんです。でもこの船本さんの使われている釜はそのどちらとも違うようです。本には、青柳茶は平釜で…とあるけど、船本さんの使われているのは斜め式である上に回転式。結局釜の違いというよりは、土地の違い(平地と山間部)の違いということだったのではないかと一人想像するに至っているのですけど、これじゃ謎が深まりこそすれさっぱり前に進んでないじゃないか〜(^_^;)。う〜むむ。。。結局知りたくてしょうがなくなって、翌朝追加がお願いできるかどうかを電話した際に少しうかがってみた。。。ら、もっと驚ろいてしまった。


実はこの青柳茶、毎朝飲んできたお茶と同じ茶葉から作られている…のだそうだ。(@_@;) 原料となる葉は同じでも、作り方が違うのだそうだ。火加減などを調節しながら、釜を回しながら水分をとばし、その後手で撚る。これを繰り返すこと4〜5回だそうだ(茶葉にみられる撚りはこうしてできたものなのですねぇ)。毎朝飲んでる方のお茶は工程も機械も別のようだ(この辺りは、船本さんのところを取材した雑誌記事の写真などからの自分の推測ですけど)。それにしても、材料が同じでもその手のかけ方で、引き出されるものがここまで違うものなのだ!(←連想して、いろいろ思うことあり…)



ところでこの香り、いったいいつまで続いたのか。いつもは会社につくとまたすぐ茶を飲むのだけれど、この日は午前中の会議が終わって昼食まで、もったいなくて飲み物を口にできなかったんです。結局ゆうに1時間以上、上顎の奥辺りから鼻腔にかけて、香り(の存在感)を感じ続けていました。身体や気持ちに溜まっていたいろんなものが流れていった気がします。。。いつかお茶作りの現場に行ってみたい!


おいしい「日本茶」がのみたい (PHP新書)