嬉し楽しい如月の望月夜〜志らくのピン・志の輔のにぎわい・立川談笑月例独演会


丸い月がかかる月火水、三夜続けて落語三昧となりました。内幸町ホールで「志らくのピン」、野毛・にぎわい座で「志の輔のにぎわい」、池袋・芸術劇場で「立川談笑月例独演会」。いや〜、ぜいたく。落語で二日酔い状態。存分に味わってきました。でも、なんといいましょうか、言葉にするのがホント、大変で、楽しいですねぇ(半ば意地)。


ちょっと言い訳っぽいンですが、落語の後に余韻を楽しみに立ち寄った処が、なんとなくそれぞれの会の印象を表しているように見えてくることに気がつきました。月曜日は新橋・烏森の居酒屋で鰈と見まごうばかりの立派なカワハギをたっぷりの肝と、熱燗。火曜日は横浜・味珍でたっぷりの辛子を酢で溶いて豚の頭とタン、これを焼酎で。水曜は中目黒・タップルームでホップのたっぷり効いたちょっとクセのある香り高い"ダブルIPA"と"ばかやろー!エール"をマッシュルームのフライと。。。なんだかどれも"たっぷり"繋がりですねぇ(笑)。もちろん、選択肢はいろいろあったわけですが、結果こうなって、それぞれがその日楽しんだ会のカラーに重なってくるような気がするんです。

志らくのピン:(悋気の独楽・)欠伸指南・百川・子別れ

「おとはぁあ〜〜ゃ」、「ひょっとこひょっとこ」、「八百屋っ!」。この三題に登場する、重要なセリフです(笑)。
「欠伸指南」どこかで以前聞いたことがあるような気がしますが、欠伸の師匠や女中までキャラを立たせてるなんて楽しいですねぇ。それにしても、歌舞伎で粋な欠伸ってあぁやるんですね(笑)。「百川」という料亭に下働きにきた百兵衛さんも、権助ばりにすごいお方。ふるさとに、なんとも妙な"ひょっとこ祭り"はあるわ(こんなこと、よく考えたもんだなぁ)、怪しい方言操るわ、周囲が勝手に話をどんどん面白くしてくれます。おバカな話はより馬鹿馬鹿しく。描き込まれた人物たちがいいですね〜。
それにしても、子別れは、何だかとても気持ちよかったのです(そういういい方って、なんだかちょっと変かもしれませんけど)。しんみりした噺を単なる人情話にはしたくない!という志らくさんの思い(賛成!)が、壁に耳あり状態で聞いてる八百屋の存在に凝縮されてます。親子や夫婦のほろっとくるやりとりを、なぜかいつもそばでじっと聞いていて、思わず熊さん「そこで何やってんだっ」と叫ぶ。
描かれる世界に入り込んで感動する落語もあれば、それをあくまでも観客として応援したり楽しんだりできる演じ方…とでもいえばいいのかな、いいですねぇ。こういう"幅"も、楽しみにして今年の会には通いたいもんです。

志の輔のにぎわい:(たらちね・)初天神・意義無し!・粗忽の使者・江戸糸操り人形・新版しじみ売り

いつも仲入り後に古今芸能を楽しませてくれる盛りだくさんな会。この日は志の八さんが2月1日付けで二つ目昇進!というお祝いを兼ねた、いつもよりも一層華やかな、そしてちょっとスリルのある会になりました。
スリリングの幕開けは、前座・志のぽんさんが「悋気の独楽をさっき教わったんです…」と切り出したこと。実は昨晩、前座でかかったこの噺を「面白くないのにやるやつが多い」とぴしゃりとやったのです、志らくさんが。う〜ドキドキ。でも始まったのは"たらちね"だったんで、ほ〜っ。ところが、えっ?うわ〜…あぶないっ!…ほっ。こういう客席の息ののみ方は、初めてでしたね〜。でも、なんとか切り抜けて、目出度し目出度し。次に登場して客席をざわめかせたのは、立川生志さんでした。おやま、初めまして!なかなかゆったりした喋り、短縮版初天神もいい感じだなぁ。そいでもって言うことにゃ「あぁいうのは、伝染するんですヨ」ときた(笑)。そして仲トリを務めた、志の八さんにそれが伝染…しかけたような。クワバラクワバラ。
こうなると、ど〜んとした安定感がいつも以上に頼もしく思えるのが、早起き噺家で有名なのだそうな、志の輔さん。まずは、なんだか会社の会議風景を連想しちゃう(←いいのだろうか!?)「意義無し!」。今聞くと韓流ドラマのようで、これでもか〜!と起伏が続く「新版しじみ売り」。団地みたいなマンションの一室で繰り広げられるあれこれを、雪の降る日の次郎吉と子供のやりとりを、スパっと鮮やかに切り取りますねぇ。終わりの時刻は、、、えぇいつもの通りでございます(笑)。そういうことを気にしちゃ、いけませんよ(してませんて)。

立川談笑独演会:猫と金魚・崇徳院井戸の茶碗

スモーク・オン・ザ・ウォ〜タ〜♪と出囃子が流れ、(自分も含めて)客席が沸きます。自分もこの日が二回目の談笑さんでドキドキ。座布団にちょこんと座った談笑さん、そこまでしなくても…というブラックな突っ込みを織り交ぜた枕で、今までの月例会と違う場所・規模というこの池袋での反応を探りながら、間合いを計っていきます。この時の客席とのやりとりって、ライブの醍醐味の一つですよね。コンサートとか舞台では多分ないんじゃないかなぁと思いますし、CDやDVDになった時に無くなっちゃう部分であることは間違いないでしょう。客層がいつもと違うと悩みつつ(祝日でもありますもんねぇ…)、談笑さんはひた走ります。押さば退け、引かば押せ。波打ち際の攻防。客席からも合いの手が入るぅ〜♪
座布団の上を右に左に時に後ろを振り返り、雄叫び上げて「猫と金魚」が走り抜け、舞台がくるりと回って「崇徳院」。古典落語になじんでると、もっと気持ちよく笑えるんだろうなぁというネタがどんどん飛び出します。古文の文法解説(?)まで入ってますヨ(笑)。「井戸の茶碗」は、新たなる存在感を持った屋根の上のアコーデオン弾きが登場。直接の掛け合いじゃなくて、間に屑屋が入るというこの噺。面白いパタンですよねぇ。それだけ演じる方は大変なんじゃないかと思いますが、こっちも一緒になって高木家と千代田家(長屋)を行ったりきたり。それにしても、こういう噺ができた背景って、どういうものだったんでしょうねぇ。武士のやせ我慢を冷やかしたり、政治とくっついていた茶道を茶化したりしてるのかもなぁ。
そうそう、談笑さんはJ亭での独演会も始まりますね。そちらも、期待です!