居心地のよさに身を任せるのが楽しいカフェ@abeki(薬院、福岡)


交差点の角に立つその店は、こぢんまりと柔らかい冬日を浴びています。最近福岡出張の際に続けてランチの後に立ち寄っている、薬院・平尾一丁目にあるカフェです。中に入ると、元は時計店だったということなので恐らくショーウィンドウだったのでしょう、綺麗に拭き上げられた二面の大きな硝子窓が目に入ります。透明なそれを通して表をぼ〜っと眺めていると、カフェの路面席に座っているような錯覚に。


通りに面しているのでそれなりに車の量も多く、時々その音に負けそうになりながら、でも決して対することなく静かに賛美歌が流れています。ハイ・スツールの足を使ったというかわいらしいテーブルや、教会で使っていたという恐らく賛美歌を入れておいたのだろうというポケットが付いた椅子は、時間を吸い込んで、思わずなでたくなってしまういい色。


「理科の先生が実験してるみたいだっていわれるんです」白衣を纏った若い店主が豆を挽き、煎れてくれているのは、コーヒーを飲み付けていないことを伝え選んでもらったブラジルという種類。そして奥さんが焼くのだという、しっとりとして肌理の細かいケーキ。お店のメニューの載っているケーキは月替わりみたいですが、持ち帰ることができる定番のフルーツケーキはわが家でも好評でリクエストされるようになってしまいました。(あ、クッキーもなかなかいけますよ!)

西に面した窓にはこの時期、誕生したイエスとそれを緩やかに取り巻く山羊たちや東方の三博士がたたずんでいます。時に日を遮るためにかけられた白い布に、舞台を演じるように影を落とします。アイボリーと落ち着いた木の色でまとめられたトーンの中で、薄くて口当たりの柔らかなボウルで飲むコーヒーは、今まで飲んだことのあるものよりも香りも味わいもじんわりと染みていく感じ。普段はお茶類ばかりを飲んでいる自分でも、あぁコーヒー好きな人がいるのも分かる気がするなぁ、と思わず深呼吸をしてしまう(笑)。


それまでの時間と自然に溶け合うような店主のセンスに弛緩して身を任せていると、今までは感じなかったことにも思いが至る効果もあるみたい。例えば、カフェの楽しみってこういうところにもあるのかもなぁ…とか。普段自分がいるのはあの硝子の向こう側で、それを隔絶するんじゃなく繋がりを保ったまま、でもそれをちょっと突き放して眺めることができるようになってるんじゃないだろうか。そう思うと改めて、「あぁ、あの窓があんなに綺麗に手入れされてるのは、だからなのかもしれないな」。。。そんな楽しみもコーヒーやケーキと一緒に味わわせてくれる店。次はいつごろ来れるだろうなぁ。

  • abeki(あべき)福岡市中央区薬院3−7−13 (電話:092-531-0005)水曜休み